インプラント

裏側のインプラント矯正について

矯正歯科とは、装置によって歯を動かし歯列を整える歯科治療です。
通常の治療ですと自費診療となりますが、噛み合わせの状態によっては保険が適用になる場合もあります

またその方法(矯正装置)も様々で、患者様のご要望や症状に応じて、治療方法を使い分けることもできます。

目立たない矯正

「できるだけ装置が目立たない方法で矯正治療を受けたい」ということは、多くの患者様が望まれていること

矯正治療を受けている期間中は、笑った時に歯に付けた銀色の矯正装置がどうしても目立ってしまいます。
とくに成人矯正の場合ですと、接客業や営業職などの患者様から「矯正装置が目立つと仕事に差し支えるため治療に踏み切れない」という意見をいただきます。

矯正治療で使われる装置で一般的なのは、歯の表側に装着するものです。
「表側矯正」または「唇側矯正」といいます。

これに対し歯の裏側、つまり舌がある側に矯正装置を付ける「裏側矯正」があります。
「舌側矯正」「リンガルブラケット」とも呼ばれるこの矯正治療法は、装置が見えにくい、あるいは見えない事が最大のメリットです。

デメリットは、表側矯正に比べて装置の調整が難しいこと。
患者様一人一人に合わせてオーダーメイドしなくてはならないため、とても手間がかかります。

その為、矯正専門医であっても扱いが限定され、また、治療費が約1.5程度と割高になってしまう事が挙げられます。
それさえなければ、表側矯正よりも良い点が多いこともあります。

例えば、上顎前突症(出っ歯)は裏側矯正の方が効率的です。
また、歯の裏側はいつも唾液で潤っているので矯正治療期間中に虫歯にかかるリスクを抑えることができます。
スポーツでの接触事故があっても、表側矯正と違って唇を切るなどの心配が少ないことが挙げられます。

裏側のインプラント矯正について

インプラント矯正というのは、通常のインプラント、つまり歯を失った部分に行うインプラントとは異なります
歯を失った部分に行うインプラントは、患者様の歯に代わるものというのが目的のインプラントです。
これに対して、インプラント矯正における「インプラント」とは、いわゆる「アンカー」

ワイヤーを引っぱる為の“杭”の目的で行われるものです。
矯正治療と共に行われるものですから、治療が終わると同時にその役目も終わり、いずれは取り除かれます。

このインプラント矯正は、1990年代後半から一部の矯正歯科医が始めたことで、比較的に新しい矯正治療法と言えます。

治療のメリットは、何と言っても治療期間の短縮ができること

このアンカーは、スクリュー状の小さなネジかプレート(板)状になっています。
いずれの形状でも、これを支点にすることでワイヤーを効率的に引っぱることができます。

通常の矯正治療は、動かしたい歯(例えば、前歯)と固定源にする歯(奥歯)と綱引きをさせるようにして前歯を(後ろに)動かします。
これですと、固定源にした動かさなくても良い奥歯まで(前に)動いてしまいます。

インプラント矯正はアンカーで引っぱりますので、動かしたい歯だけを動かすことができるという仕組みです。
「矯正治療期間をできるだけ短くしたい」というご要望は、見えない裏側矯正と同じく、成人矯正では多く寄せられるご要望の一つです。

つまりこの裏側のインプラント矯正こそ、そうした成人矯正のご要望に、最もお応えしうる矯正治療法の一つだと言えるでしょう。

この他のメリットは、抜歯しなくても矯正治療ができる可能性が高くなること

矯正治療での抜歯はよくあることで、例えば、奥歯と前歯の中間に抜歯してスペースを作り、そこに歯を詰めていきます。
インプラント矯正は動かしたい歯だけ引っぱることが出来るので、奥にスペースがあれば抜歯する必要がなくなるのです。

また、大掛かりな外科手術が必要な難症例であっても、このインプラント矯正ならば対応できる可能性がある場合もあります。

デメリットは、インプラント手術をしなければならないということ

この一点だけです。
ですから、デメリットの少ない非常に良い歯科治療と言えますが、注意すべき点もあります。

手術の難しさで考えるならば、普通のインプラントをするよりも容易ではあります。
血管や神経が通っていない部分にインプラントしますし、インプラントアンカー自体も細く短く小さい。
埋入も浅くて済みます。

表側矯正のインプラント矯正ですと、多くは外側の奥歯付近の歯茎にインプラントします。
裏側矯正のインプラント矯正でなくとも、裏側の歯茎にすることもあります。

また、裏側矯正の場合は、裏顎の部分にプレート状のアンカーを取り付けることもあります。

しかし、インプラント矯正はあくまでもインプラントですから、手術が必要なのは普通のインプラントと同じです。
手術の際は、感染症対策に万全でなければなりませんし、腫れやむくみといった症状が出てもすぐに処置できるよう準備をしておかなくてはなりません。

いくら手術が簡単だからといって“ぞんざい”に行われますと、残念なことにインプラントアンカーが定着せず、打ち直しすることになります。
インプラント矯正であっても、通常のインプラントと同様に手術していただける歯科医院にお願いするべきだと思います。

脱着可能なマウスピース型の矯正装置

普通の矯正では、矯正装置を一定期間、歯に装着し続けることになります

しかし、「クリアアライナー」は名前のとおり透明な装置で、食事する時は外すことができるというもの。
裏側矯正でなくとも装置が目立たないことが人気の矯正治療です。
<クリアライナーについて詳しくはこちら>

しかし、このクリアライナーも、また同じことが言えます。
クリアライナーはインプラントなど手術の必要がなく、また普通の矯正治療と違って、患者様ご自身でいつでも装置を取り外すことができます

通常の矯正の場合、食べ物が矯正装置に引っ掛かりますので、お食事の後のブラッシングは欠かす事ができません。
矯正治療におきまして、この「虫歯になりやすい」という事は、とくに注意すべき点です。

ですが、クリアライナーの場合は外して食事する事ができます
虫歯にかかるリスクはほぼ無いと言っていいでしょう。

1日のうちで決められた時間以外は着ける必要はありませんので、快適に矯正治療を受けることができます。
しかし、それゆえに付け忘れたりすると治療期間が大幅に伸びてしまうのです。

簡単にできる事にこそ、落とし穴があるもの。
万が一に備えて慎重に慎重を重ねることは、決して無駄ではないと思っております。