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歯周病の現状と「ペリソルブ」の活用 – 日本歯科新聞

歯周病の現状と「ペリソルブ」の活用

 歯科の先進国と言われるスウェーデンでは、国の歯科ガイドラインに「ペリソルブ」等の歯周病ポケットの上皮細胞を殺菌する治療が盛り込まれつつある。その研究元でもあるイエテボリ大学の日本スクーリングが4月22日に大阪、7月1日に東京で開かれる。超高齢社会の日本で健康長寿社会を実現するためにも歯周病への対策は欠かせない。日本における歯周病の現状や、「ペリソルブ」の有効性について、日本アンチエイジング歯科学会会長の松尾通氏の司会進行で、日本臨床歯周病学会副理事長で歯周病専門医の若林健史氏、スクーリング主催者の興学会代表理事の小野芳司氏、同学会総院長の白井清士氏に話し合ってもらった。

<松尾>歯周病に対する認識がここにきて大きく変わってきています。歯周病専門医として活躍されている若林先生は、どのように感じていますか。

<若林>20~30年前は歯科と言えば補綴が中心で、歯周病というものが歯科医療従事者の中ではまだまだ軽く見られていた節があり、「歯周病を中心に診療している」と言うと、「そんなことをやっているのか」と言われるような時代でした。
 それがここ数年、歯周病と糖尿病や誤嚥性肺炎、骨粗鬆症、低体重児出産、アルツハイマーなどとの関係を示すデータが出てくるようになりました。マスコミが取り上げるようになったこともあり、国民が歯周病が怖い病気だと気づき始め、歯科界でも脚光を浴び始めたのだと思います。

<松尾>日々の臨床の中で、患者さんの関心などに変化はありますか。

<若林>私は歯周病の専門医として診療所を経営しているので、ホームページでも歯周病を中心にした内容にしています。今までは審美や、インプラントなど補綴的な要望で来院する患者さんが多くいたのですが、ここ2、3年は、ホームページを見て、「私、歯周病かもしれない」「ちょっと心配」といった電話が増え、歯周病が主訴の新患が多くなってきました。

<松尾>ここ数年の歯周病への関心の高まりは、歯科治療に革命が起きているとも捉えられる変化だと思います。全身との関係、特に微少炎症が身体の様々なところで悪影響を引き起こすことが明らかになってきました。その微少炎症の最たるものが歯周病で、医科も歯科も含めて解決しなくてはいけない問題として注目を集めています。歯周治療のノウハウもたくさんあると思うのですが、イエテボリ大学発の治療を日本で普及させようという動きがあり、昨年のスクーリングも大反響を呼んだと聞いています。スクーリング開催にはどのような狙いがあるのでしょうか。

<小野>スウェーデンでは、85歳の残存歯数の平均が25本と言われていますので、28本の歯が全部残っている高齢者も珍しくありません。生活習慣の一部としてデンタルケアが浸透している証拠として、同国のイエテボリ大学には、ケアユニットが72台、治療ユニットが40台ありますが、私が訪問した時はケアユニットが患者さんであふれていました。そこで使用しているのが「ペリソルブ」です。イエテボリ大学発ベンチャー企業が開発・製造しているもので、学内に工場もあります。歯周病の一番の原因とも言われるPジンジバリスの2型は、嫌気細菌ですので空気のないポケットの深部に逃げていき、そこから上皮細胞中に入っていきます。ある研究では一つの上皮細胞に100以上の細菌が確認されているのです。日本での歯周病治療の中心は歯面清掃ですが、真の歯周病治療には上皮細胞の中の細菌の殺菌も欠かせないのではないかと思います。ペリソルブは、次亜塩素酸とアミノ酸の組み合わせでできており、クロロヘキシジンの倍以上の殺菌力がある一方で、アミノ酸が正常な細胞を保護してくれるというメリットがあります。その有効性もあって、スウェーデンではペリソルブが国のガイドラインに盛り込まれる動きが出ています。そのガイドラインの責任者が今回の演者でもあるイエテボリ大学カリオロジー科主任教授でスウェーデンう蝕学学会副会長のピーター・リグストローム先生です。

<松尾>アメリカもそうなのですが、欧州でも大学発のベンチャーはたくさんあり、大学の教授の多くがベンチャービジネスの社長や執行役員として活躍しており、業界の発展にも大きく寄与しています。日本の大学ではベンチャーでの活躍という点ではまだまだ発展の余地はあると思いますので、海外の良いところは参考にしてほしいと感じています。

<小野>イエテボリ大学では、大学病院の隣にベンチャー棟があり、大学発の様々なベンチャーが集約されています。大学の研究を引き続きベンチャーが商品開発し、売れたものが大学に入ってくるだけでなく、上場までを大学がサポートするシステムができているのです。カリソルブ、ペリソルブもジャスダックに上場を果たしています。

<松尾>上場したくらいなので、ペリソルブはヨーロッパでも注目の治療法なのでしょうね。白井先生は興学会の診療所の責任者として、実際にペリソルブを使っていらっしゃるようですが、率直な感想はどうですか。

<白井>ペリソルブの前に、できるだけ歯を削らないMIの観点からカリソルブを使っていました。5、6年の臨床を経て、カリソルブの良さを改めて実感している時に、同じような成分で軟組織に作用するというペリソルブの開発を知りました。
 実際に医院で導入してみると、歯科衛生士からの評判が良く、患者さんからも痛みが少ない点から喜ばれましたので、SRPやディープスケーリングをするときは必ずオプションで使う仕組みを取っています。力を入れて歯石を取る必要が少なくなった分、飛沫も抑えられて二次感染のリスクも低減できていると思います。

<松尾>若林先生は使用したことはありますか。

<若林>私の医院でも使ってみましたが、ベテランの歯科衛生士は、今までパキパキと、こびりついた歯石を弾き飛ばすように取るというイメージが、さくさくとこそぎ取れるようになったと言っていました。
 私自身は、根面のぬめりが次亜塩素酸の効果でなくなるのか、バイオフィルムがない状態の根面をキュレットでキレイにしているので、対象部位がクリーンになっているとの実感を持つことができました。
 患者さんに感想を聞いてみると、味がする訳ではなりですし、少しカルキ臭のようなものはあるものの、不快な感じはないとのことで、結果的には好評を得ています。

<松尾>両先生とも使った感触はよさそうですね。昨年のスクーリングは700人ほどが参加し、非常に反響があったと思うのですが、今回と前回では何か違いはありますか。

<小野>ピーター・リングストローム教授に加えて、今回新たにヨーロッパ歯周病学会の元総長でスウェーデン歯周病学会会長のステファン・レンバート教授に講演してもらいますので、昨年と比べて、さらに歯周病へのアプローチに焦点を当てた内容になると思います。また、スウェーデンではここ4、5年、国のガイドラインが著しくアップデートされており、スウェーデンから歯科疾患がなくなるのではないかと各国から注目を集めていますので、今後の世界の歯科医療の動きを見極める意味でもスウェーデンの現状を知っていただきたいと思っています。

<松尾>カリソルブはタービンレスで患者さんにとって優しい治療として日本で根強い評価があったのですが、健康保険の中で安くレジン充填ができることもあってか中々普及しませんでした。カリソルブやペリソルブの費用面についてはどう考えていますか。

<小野>確かにカリソルブは1万5千円前後の費用はかかってしまいます。しかし、カリソルブを使用すると接着力が増して、二次カリエスになりにくいというデータも出ています。保険治療後の二次カリエスのリスクも考えると、決して高い値段ではないと思います。そういった意味では、国民への情報提供が必要なのかもしれません。しかし、まずは日本の歯科医療従事者の方々にスクーリングに参加していただき、スウェーデンの歯科治療の最前線と共に、カリソルブ、ペリソルブがどのように臨床に使えるのか、使った後の効果がどうなのか、メカニズムがどのようになっているのか知ってもらいたいと思っています。

<松尾>歯科医師は、患者さんのあらゆるニーズに応えるために引き出しを多く持つに越したことはないと思います。世界が注目しているスウェーデンのう蝕・歯周病治療は、歯科医療従事者として抑えておいて損はないトピックスだと思います。