虫歯も歯石も溶かして治療
虫歯を削る耳障りな音やチクッとした痛み、歯石を取る時のしみる感覚――誰しも身に覚えがあるのではないか。興学会歯科診療所(東京都港区)の白井清士院長は「治療がトラウマになり、歯科恐怖症になっている人も少なくない」と明かす。
そんな人々を救うのが、虫歯も歯石も削らず溶かして治す技術。
白井院長は、5年ほど前から取り入れてきた。
「虫歯にゲル状の薬剤を塗り1分ほど待つと、虫歯が柔らかくなり、フレーク状になって溶けてゆく。薬剤は1998年にスウェーデンで認可され、日本でも2007年に厚労省の認可を受けたカリソルブ。虫歯だけを溶かすので神経にも触れず、周辺の健康な組織を傷つけることもありません」(白井院長)
歯石や歯垢(しこう)を取る場合も同様で、歯周ポケットにぺリソルブという薬剤を塗ると歯石や歯垢がフレーク状になり、はがれる仕組みだ。
溶かすメリットは「無痛」以外にもある。
「虫歯や歯石は細菌の塊。削れば口の中に飛び散り、体内に侵入して時に誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしたり、目に付着すれば結膜炎になる。その点、溶かす治療なら薬剤自体に殺菌効果があるため、そうした心配がありません。繰り返し塗布するうちに、殺菌効果で歯や歯茎が丈夫になります」(同)
歯を削る場合は点滴で鎮静薬も
保険適用外で、カリソルブは1万5000円、ぺリソルブは1万8000円。
ただ、虫歯のそばに詰め物などがある場合は、塗布前に歯を削らねばならないケースもある。
その場合も、希望すれば、点滴で鎮静薬を投与し、寝ているような状態で処置をしてくれる。
「口にものを入れると『おえっ』となる方やパニック障害の方に喜ばれています。インプラントや審美治療でも『寝ながら』が可能です」(同)
「痛みに耐えてこそ治る」「耐えるのが美徳」という時代も今は昔。
不安な向きは徒(いたずら)に恥ずかしがらず、怖がらず、「無痛」を選択するのもアリだ。
引用元:毎日新聞