「健康で美しく」という意識が高まってきた今日、歯科矯正を望む方が増えています。
相変わらず女性からの相談も多いのですが、とくに最近は30代、40代の男性サラリーマンがよく相談にいらっしゃいます。女性に限らず、男性もご自身の健康に対する関心がとても高く、それに対する投資であれば納得できるという方が多いですね。
矯正を希望される方にその理由をお伺いすると、「以前から歯並びが気になっていて、ずっと矯正をしたかった」と答える方がけっこうおられます。また、「昔の矯正が不十分だった」「“後戻り(矯正後、もとの状態に戻ろうとする力が働いて、歯が前後にずれたり、隙間が空いたりすること)”が起こったので、それを治したい」という方もいらっしゃいます。
いずれにしても矯正のニーズは以前より高まっていると感じています。
相談される方の、その内容も少しずつ変わってきているような気がします。
もちろん、今でも「見た目」から矯正を希望される方が少なくありませんが、「肩こりがひどい。咬み合わせが原因かもしれない」「歯ぎしりやいびきを指摘されたので、咬み合わせを診てほしい」といった相談も受けるようになりました。また、虫歯や歯周病を治療しているときに私の方から、「肩こりはない?」「目は疲れない?」といったことを伺うこともあります。誰にでも、というわけではなく、不正咬合がとくに目立つ方に絞って聞いているのですが、「実はある」と答えた方に、咬み合わせとそれが誘因となるさまざまな症状についてお話すると、興味を持って聞いてくれます。
これも、健康情報の一つとして、咬み合わせは全身に悪影響を及ぼす可能性があるということが、だいぶ一般の人に浸透してからだと思います。
実際、歯並びの悪さ(専門的には「不正咬合」と言います)は、虫歯や歯周病につながったり、肩こりや頭痛などの症状をもたらしたりする原因になるので、できれば咬み合わせが合った状態に矯正したほうがいい――これが私たち歯の専門家の意見です(不正咬合の問題については、コラム「豆知識1回」を参照)。しかし、歯並びが悪いからといって、単に歯並びをよくすればいい、というものではありません。ここは、しっかりと頭に入れておいて欲しいと思います。
咬み合わせというのは、一時的に決まるものではなく、長年の生活習慣によってもたらされた「クセ」のようなものです。歯並びが悪い人は、悪い人なりに咬み合わせが合っていることも少なくありません。ですから、それをご破算にして新しい歯並びに変えるということが、必ずしもいいとはいえません。私たち人間の美意識に基づいて「美しく」「健康“的”」な歯並びにした結果、体にかえって負担がかかって、新たに症状が出てきた、前より肩こりがひどくなったということも、現実問題としてあるのです。
したがって、矯正をするときは慎重に、「できるだけオリジナルの咬み合わせを変えないで、その方のもっともバランスの取れた咬み合わせに」もっていかなければなりません。それが結果として、患者さんにとっては「見た目では物足りない」結果になるかもしれません。ですが、咬み合わせを考慮したらそうならざるをえないこともあるのです。
では、どういう方が矯正をした方がいいでしょうか。
例えば右の表のような症状があって、いろいろと病院で診てもらったけれど治らない、慢性的に続いているという方は、咬み合わせが原因で症状が起きている可能性があります。一度、歯科医院・病院で咬み合わせをチェックしてもらったほうがいいかもしれません。また、きちんと歯を磨いているのに虫歯や歯周病になりやすいという方も、歯並びの悪さが原因になっている可能性があります。やはり診てもらった方がいいでしょう。
片頭痛・めまい・いびき・鼻づまり・舌の痛み・発音障害・視力低下・眼底痛・耳鳴り・難聴・あごの関節が痛い・口を開けたときにあごの関節が鳴る・嚥下障害(えんげ)・首が回らない・肩こり・腰痛・不眠・うつ症状・冷え・手足のしびれなど
見た目の問題から、よくあるワイヤーの矯正はできないという人が多いと思います。特に成人の場合、お仕事の都合など、社会的な問題から矯正したいけど踏み出せないという方が多いのが現状です。 また、あの装置がずっと入っているのが不快だという方もいらっしゃると思います。そういった悩みを解決したのが、マウスピース矯正です。
このマウスピースを一日の決められた時間に装着していくだけで、歯が理想的な位置へと動いていくのです。 透明で目立たないだけでなく、決められた時間以外は外しておけるという、大変快適な矯正装置なのです。歯並びに悩みがある方は、ぜひお問い合わせください
歯列矯正の種類
クリアアライナーとは、透明なマウスピースを歯にかぶせて歯を動かしていく矯正装置です。八重歯を抜かなければならないケース、歯が極端に出ているケース、著しい乱ぐい歯(歯が生える位置がバラバラで歯並びがでこぼこになった状態。あごに対して歯が生える場所が足りなくなることで起こる)など、ふつうの矯正でも難しいようなケースには対応できませんが、それ以外であれば矯正は十分、可能です。また、インプラントや入れ歯を施す前処置としても最適です。
こんな人に向いています!!
実際の症例写真です。
上の前歯の隙間が開いているのを、クリアアライナーで矯正し、隙間を埋めています。
上の前歯が外側に向いてしまっています。それをクリアアライナーでまっすぐに治しています。
上のフローがクリアアライナーの矯正の一般的な流れになります。患者さんのライフスタイル、歯の動き方の状態などによって、若干、期間が変わることもあります。
【検査】
レントゲンで歯周病や虫歯のチェックをします。必要なら虫歯治療や歯石除去などを行い、その後で歯形を取ります。この歯形をもとにクリアアライナーが作られますが、完成するまで2週間かかるので、その間は待つことになります。
【ソフト装着】
2週間後に完成したクリアアライナーを取りに来てもらいます(ケースにはソフトタイプ・ハードタイプが入っています)。そこでまずソフトタイプのクリアアライナーを装着、歯をゆるやかに動かしていきます。装着は2週間続けます。
【ハード装着】
2週間後、ハードタイプのクリアアライナーに変え、歯をしっかりと動かしていきます。3~4週間、装着をします。
【チェック】
ハードタイプのクリアアライナーを付けてから1週間後に、新しく歯型を取るためと、歯の動き具合をチェックするため、診察を受けます。また、2週間後に新しいクリアアライナーができあがるので、それを受け取りに来てもらいます。
※この【ソフト装着】~【チェック】の行程(ステージと言います)を3、4回繰り返します。【リテーナー装着】矯正が終了したら、「後戻り」しないように、リテーナー(保定装置)という専用の装置を1年ほど付けてもらいます。
事前に取った歯形をもとに、歯を少し動かした状態の模型を作成。模型に合わせて、マウスピースを作り、それを装着することで少しずつ歯を動かしていきます。写真は、内側を向いている前歯(○をした部分)を、正面を向いた状態に矯正していく過程です。
従来は、「ブラケット」と呼ばれる歯の表面に付け、ワイヤーで締めていく方法が取られていました。今も八重歯や乱ぐい歯(歯が生える位置がバラバラで歯並びがでこぼこになった状態。あごに対して歯が生える場所が足りなくなることで起こる)や反対咬合(下の歯が上の歯より前に出た状態。うけ口)などの方では、こちらの方法のほうが適しているといえます。
ただ最近は、ブラケットの性能も良くなり、小さく、薄くなっていますし、「いかにも矯正をしている」感じの受けるシルバーのメタルやチタンだけでなく、目立たちにくいセラミックやハイブリッドセラミック、プラスチックなどの素材を使ったブラケットも登場し、さりげなく矯正をすることもできるようになりました。ちなみに、写真はポリオキシメチレンという特殊な樹脂を用いたブラケットです。
こんな人に向いています!!