インプラントや親知らずの抜歯など手術が必要な治療に対しては、ひときわ恐怖心が強くなってしまいます。そのため治療に踏み切れず、不自由な思いをしている患者様も少なくありません。そんな方に利用していただいているのが、静脈内鎮静法です。
実際に受けられた患者様の満足度は非常に高く、苦痛などみじんも感じないうちに治療が終わってしまった、という方がほとんどです。※静脈内鎮静法は自費診療になります。
静脈内鎮静法は、精神安定剤を静脈に点滴していく方法です。使用する精神安定剤は数種類を組み合わせます。
点滴を始めると、間もなくリラックスした状態になってきます。体が温かくなってきて、ちょうどいい湯加減の温泉につかっているような、あるいは、快適なベッドの中でぬくぬくとまどろんでいるような感じになります。その後、1~2分もすると眠気が強くなってきて、ついには眠ってしまいます。患者様によって、あるいは状況によっては意識を残すこともあります。
当然ながら、治療に伴う痛みや不快な音などは、まったくといっていいほど気にならなくなり、文字通り「いつの間にか治療を終えてしまう」といった状態になります。術中のことを全く憶えていない患者様も少なくありません。意識を残した場合は、声をかけられればちゃんと反応します。うとうと眠ってはいるけれど、答えることができるというわけです。
まず静脈から点滴をします。場所は主に腕ですが、患者様によっては手の甲など他の部分にすることもあります。 点滴をする際の静脈注射に対する痛みを完全になくすことはできないのですが、使用している注射針がきわめて細いため、「注射が怖い」という患者様でさえ、さほどつらくないということがほとんどです。
点滴がスムーズにいっていることを確認できた時点で、精神安定剤を注入していきます。薬品の量は患者様の様子を見ながら調節していきます。
その際、患者様の「歯科治療への恐怖の度合い」によって、完全に眠った状態にするか、軽く受け答えのできる状態のいずれかにします。
患者様が完全に痛みなどを感じなくなったことを確認した後で、必要に応じて局所麻酔を行います。笑気吸入鎮静法と同じく、静脈内鎮静法も麻酔効果は得られないためです。 治療がスタートした後も、患者様の心拍や血圧などのデータをリアルタイムでチェックしながら、万一の場合に備えます。たとえ患者様の状態が急変しても、対応できるような準備を万全にしておくのです。
ちなみにデータ確認のための機材は、常に最新の機器をそろえております。実際に使用するのは1台ですが、もし、何らかの原因で使用できなくなった場合を考えて、予備も用意しているのです。毎年新しい機材がより良い機能を備えて開発されています。当院では、常に最新の麻酔機器を準備し患者様に不利益が生じないようにしています。
使用する精神安定剤は、いずれも有害な作用のない、たいへん安全なものなので、その点も安心していただけます。
静脈内鎮静法を利用する方も決して少なくありません。治療時間が3~4時間で、一度に多くの歯を治療するときは、静脈麻酔法を用います。
そのため通常の状態に戻るまでは、クリニックでゆっくり休んでいただくようにします。
また、「車や自転車の運転を控える」「患者様の様子を的確に把握するために、口紅やマニキュアをとってもらう」「当日は帰宅後も安静にする」など、いくつかの注意事項があります。翌日からは普段通りに生活して、まったく問題ありません。
なお、保険診察は、きわめて細かいルールが決められています。歯科で使える薬剤・材料や、歯の治療にかかる回数や期間など、制限が多くあります。 静脈麻酔法では、短期集中治療を行います。ですから保険のルールに当てはまらないケースばかりになりますので、自費診療となります。