歯科領域においてレーザー治療の範囲は広がってきています。今やレーザーは虫歯や歯周病など一般歯科治療に使用されるだけではありません。最先端のレーザー治療では、リフトアップやより負担の少ないいびき改善の治療も行われています。
これまでリフトアップは、主に美容外科や美容皮膚科の領域でした。そのため歯科医によるリフトアップの治療と聞くと、違和感を覚える方もいるかもしれません。しかし、口腔内から使用できる最新レーザーの登場は、歯科医による美容領域の治療をも可能にしました。口腔内からレーザーを照射するという点で、これまでの美容治療とは一線を画すものになっています。
また、この最新レーザーの登場は、これまでのいびき改善の治療をより負担の少ないものにすることも可能にしました。
今回は、最先端のレーザー機器である「ライトウォーカー」を使用したリフトアップやいびきの治療について、赤坂歯科診療所院長・高宮善正先生にお話しいただきました。
レーザーを使用した主な歯科治療
歯科領域におけるレーザーの適応は広範囲にわたります。よく知られているものとしては、虫歯や歯周病の予防及び治療が挙げられます。また、切開手術などの外科処置に、より負担の少ないレーザーが選択されることもあります。
<従来のレーザーを使用した歯科治療例>
・虫歯の治療・予防
・歯周病の治療
・知覚過敏症の治療 など
ここではそれぞれの治療についてご説明いたします。
●虫歯の治療・予防・レーザードラックデリバリー
レーザーによる熱エネルギーで虫歯の原因となる虫歯菌を除去します。また、治療のみならず予防にも効果を発揮します。レーザーによって歯が強くなり虫歯になりにくくなるほか、歯を強くするためのフッ素等の薬品も浸透しやすくなります。
●歯周病の治療
歯周病とは歯茎が歯垢(しこう)内の細菌によって炎症を起こしてしまう疾患です。この疾患が進行すると歯茎からの出血や口臭がひどくなることが特徴です。また最終的には歯を支えている骨が溶け、歯が抜けてしまうこともありますし、歯周病菌は歯周ポケットの上皮細胞中に入り込んでいます。
レーザーによる治療は、このような歯周病の治療においても有効です。歯と歯茎の間の溝にレーザーを照射し、上皮細胞事歯周病菌を除去します。
●知覚過敏症の治療
知覚過敏症とは、冷たいものに反応し歯がしみる症状をいいます。これは、象牙細管(ぞうげさいかん)という歯の神経につながる孔（あな）が開いているため、神経が刺激され起こるものです。レーザーで治療をすることで歯の表面に薄い膜ができ、歯がしみることを防ぐことが可能です。
その他にも、外科処置や神経の治療をする際にも使用されます。レーザー治療を採用した場合、ほとんどの処置において無麻酔または麻酔の量を減らすことができます。そのため術後の痛みが少なく、傷の治りが速いことも大きなメリットです。
歯科医で美容領域の治療が可能に！？口腔内から照射をするライトウォーカーの登場
先にお伝えしたとおり、歯科治療においてレーザーが使用されるようになりましたが、歯科医によるレーザー治療は、主に歯や歯茎の治療に使用されることが一般的です。
そんななか、最先端の複合型レーザーとして開発されたのが、ライトウォーカーです。ライトウォーカーは主に美容治療に用いられ、リフトアップを目的とした施術に使用されます。口腔内から粘膜に向けてレーザーを照射するというこれまでにないレーザー治療を実現し、歯科医による美容領域の治療を大きく広げました。
従来たるみやシワをレーザーで治療する際には、皮膚表面から熱を与える施術が一般的でした。しかし、皮膚表面は通常40度を超えた熱を与えると、痛みを伴います。その一方で口腔内は皮膚と異なり、60度近い熱を与えても、痛みを感じることがほぼありません。ライトウォーカーはこの特性を活かし、口腔内から熱を与えます。
皮膚表面と比べると口腔内は皮下深層に近く、口腔内からレーザーを照射することでより高いリフトアップ効果が期待できます。
主にライトウォーカーを使用したリフトアップの治療には、スムースモードと呼ばれる照射法が用いられます。これは、口腔内の粘膜を保持しながら、長時間の連続照射を可能にするものです。照射時間を長くすることで、表層に熱が効率よく伝わります。
●ライトウォーカーを開発した老舗レーザー機器メーカー・フォトナ社
2005年頃から、アンチエイジングをテーマとしたさまざまなレーザーが開発されるようになりました。医療用レーザー機器の老舗メーカーであるフォトナ社は、常に革新的なレーザー機器を開発してきましたが、そのひとつがライトウォーカーです。
リフトアップをレーザーで可能にするスマイルリフトとそのメリット
このライトウォーカーは、口腔内からのリフトアップを可能しますが、この治療方法はスマイルリフトと呼ばれます。
先ほど述べたように、口腔内から照射するライトウォーカーを採用することで、皮膚表面からでは困難な熱量を与えることができます。
その結果、口周りから頰にかけてのたるみをレーザー照射の直後から引き上げることができます。表情筋を引き締めることで、たるみの解消につながります。また、コラーゲンを集めて盛り上げる作用もあり、肌のハリを保つ効果を実感することができます。
●即効性と自然な印象を実現
スマイルリフトは、治療直後からはっきりと効果を実感することができます。たるみやシワがすぐに改善されることが大きなメリットで、自然な印象の仕上がりになることも特徴です。スマイルリフトは、顔や身体に特殊な薬品を注入するような治療ではありません。その方がもともと持つ筋肉やコラーゲンなどを生かす治療方法なので、仕上がりも自然です。
●ヒアルロン酸注入と同様の効果
スマイルリフトは、ほうれい線や皮膚のたるみが原因でできるゴルゴラインを改善することができます。特に、気にする方が多いほうれい線の解消においては、ヒアルロン酸注入と同様の効果が期待できます。
●思い描いた顔の形にすることが可能
口腔内から顔の形を若返らせることができ、悩みに合わせた効果を得ることが可能です。痩せて頰がこけたように見える方はふっくらと、反対に頰が太って見えてしまう方や加齢によるたるみがある方の場合は、引き締める効果が期待できます。
●痛み・ダウンタイムがほとんどない
通常の美容治療には、腫れや内出血を伴うものも少なくありません。治療後の処置や痛みを危惧される方も多いと思います。スマイルリフトの治療は、痛みやダウンタイムがほとんどありません。治療後は、そのまますぐに帰ることができ、直後のお化粧やお食事も可能です。
レーザーによるいびきの治療「ナイトレーズ」
ライトウォーカーは、美容治療だけでなく、いびきの治療にも有効です。いびきの原因は、睡眠時に口蓋垂（いわゆる「のどちんこ」）やその周辺部分が気道を塞いでしまうことにあります。そのため、従来のいびきの治療は、口蓋垂やその周辺部分をメスかレーザーにより切除し、気道を広げる方法が一般的でした。
ライトウォーカーを用いると、この切開施術が不要になります。まず、ライトウォーカーを口腔内（軟口蓋や口蓋垂）に照射します。すると、口の中の緩んだ組織が引き締まります。いびきの原因となる口蓋垂やその周辺部分が引き締まるため、切開なしでも気道を広げることができるのです。
照射された粘膜の表面が剥がれることや傷つくこともありません。レーザーを当てるのみで治療が完了するので、痛みがほとんどないことが大きなメリットです。
メスの場合、入院が必要となり、痛みも大きく傷口が完治するまでに長い時間を要しましたが、ライトウォーカーは患者さんの負担が少なく、睡眠の質を簡単に向上できます。
